釣は2003年からオーストラリアのメルボルンに移住。その後ベルリンを経て、現在はイタリア南部にあるサンテリーア・ア・ピアニージを拠点としています。本展のタイトルにある「Sant’Elia a pianisi」はその地名に由来しています。
釣はメルボルン滞在中、スケートボードとグラフィティに励み、地元のシーンの中で独自の表現方法を探っていきます。2012年にスウィンバン大学でビジュアルアートとニューメディアのコースを修了し、社会参加型の作品についての知識と作品形式の幅を広げます。
僕と釣の出会いはその頃。各国で描いた壁画の写真を見せてもらいながら、旅の話を聞いた記憶があります。その後も何度か日本でのプロジェクトの合間に会いにきてくれました。
今夏、サンテリーア・ア・ピアニージを訪ねました。スタジオ内は制作中のキャンバス、壁面にはドローイングや写真。作業台はレジンで実験を重ねている形跡。部屋の中には自身の絵や彫刻、旅で拾ってきたものたちが飾られています。出かける時は常にノートと画材(と果物とウイスキーボトル)。
近年は旅の道中で目にした動植物やモノたちを題材にしています。壁画においてもその土地の文化、歴史、その土地に生息する動植物や人々を調査し、それらをモチーフに構成していく作品が多く見受けられます。
釣の制作にとって、「旅」が重要な材料であるといえます。また、作品形態や技法に固執することなく、日々実験を重ね、自在に変化していく姿は、新たなスタイルを獲得するための旅をしているかのように思えます。
本展では釣の活動拠点サンテリーアや欧州各地で見たもので構成された新旧作、名古屋に滞在して制作される新作等を発表します。名古屋での個展は初めてとなります。この貴重な機会に是非見ていただきたいと思っています。